変わりたいのに怖い。変わらない不満と、変わる不安のあいだ

今のままでは嫌だ。

でも、変わるのも怖い。

この二つは、矛盾しているようで、心の中ではよく同居しています。

仕事を変えたいけれど、次が見つからなかったら困る。

人間関係を終わらせたいけれど、一人になるのは怖い。

新しいことを始めたいけれど、失敗した自分は見たくない。

舞台の中央では「変わりたい私」が話し、舞台袖では「ちょっと待って」と、もう一人の私が服の裾をつかんでいます。

不満があるのに、そこに居続ける理由

以前、『嫌われる勇気』をオーディオブックで聞いていたとき、「変わらないことへの不満」と「変わることへの不安」という考え方が出てきました。

なるほど、と思いました。

表面に見えているのは、今の状況が変わらないことへの不満です。

なぜ私は、あの人のようになれないのだろう。

なぜ私には、ほしいものが手に入らないのだろう。

けれど、その場所に居続けているのは、今の自分なら、なんとか生き方がわかるからです。

不満はあっても、見慣れた舞台です。

どこで転びやすいかも、誰が何を言うかも、だいたいわかっています。

変わったあとの自分は、まだ台本を持っていません。

今より悪くなったらどうしよう。

うまくできなかったらどうしよう。

未知の舞台へ出る不安の方が大きいあいだは、不満のある今を選ぶことがあります。

動けないのは、変わりたくないからではない

変わりたいと言いながら動けないと、自分を責めたくなります。

本気ではないのでは。

覚悟が足りないのでは。

また口だけになっている。

でも、動けないのは、変わりたくないからとは限りません。

知らない場所へ行く準備が、まだできていないだけかもしれません。

人は、納得できないまま急に一歩を出せるほど、いつも大胆ではありません。

「大丈夫?」

「本当に大丈夫?」

と何度も確認しながら、足元を固めていく時間も必要です。

人生劇場の開演前に、舞台袖で深呼吸しているようなものです。

大きく変える前に、小さな足場を作る

最後に一歩を出すのは、自分にしかできません。

けれど、いきなり別人になる必要はありません。

変わったら何を失うのが怖いのか。

いちばん心配していることは何か。

もし失敗しても、戻れる場所はあるか。

何がわかれば、一歩だけ進めそうか。

不安を追い払うのではなく、一つずつ確認していく。

それだけでも、「変わる」は、正体のわからない大きな怪物ではなくなっていきます。

変わらない不満を抱えている自分も、変わることを怖がっている自分も、どちらも自分です。

片方を無理に舞台から降ろさなくてもいい。

二人の話を聞いたうえで、今日はどこまで進むかを決める。

勇気というのは、怖くなくなることではなく、怖い自分も連れて、次の場面へ移ることなのかもしれません。


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